7人の社労士特別版 社労士が教える
― ここだけは押さえておきたい
雇用の新常識
「求人を出せば人が集まる」時代は、もう終わりました。
採用難の時代に必要なのは、古い常識を捨てることではなく、雇用の常識をアップデートすること。今、企業がより意識を高めておきたいテーマが「多様性」「副業」「ハラスメント」です。これらは単なる流行ではなく、“選ばれる会社”になるために欠かせない新常識。ここでは、7人の社労士が現場で感じるリアルな視点から、そのポイントをわかりやすく解説します。
- 1雇用の多様性
― 採用競争は「多様性対応力」で決まる
- 少子高齢化で労働人口が減少する中、「これまでの採用対象」だけでは人材が確保できません。子育てや介護を優先したいパートタイマーの方、シニアの方、障害のある方、外国人の方、スキマ時間を活かすスポットワーカーの方。こうした多様な人たちを「難しいから」と除外してしまえば、優秀な人材を自ら逃すことになります。今の採用現場で求められるのは多様性=ダイバーシティ対応力です。会社が多様性に配慮した制度を整えるとどうなるでしょうか。柔軟な勤務体系、ライフスタイルやライフステージへの理解、キャリア形成への支援を示せば、「自分を活かして働ける会社だ」と感じてもらえます。結果として採用競争に強くなりえるのです。雇用の多様性対応は、まさに採用戦略の切り札です。
- 2副業
― 制限から「応援」へのシフト
- 「副業禁止」――これも今までの常識の代表です。副業を容認すると本業に集中しないのでは、という懸念は根強くあります。しかし、若手世代ほど「自分のキャリアを自分で切り開きたい」と考える人が増えています。実際に、副業を通じてスキルや人脈を広げた社員は、会社に新しい知見を持ち帰ります。企業にとっても大きなメリットになりえるのです。もちろん副業にはルール作りが必要です。
- 本業に支障を与えないこと
- 競合他社で働かないこと
- 就業規則に副業ガイドラインを明記すること
この最低限を整えられると、副業は「流出リスク」ではなく「成長への投資」に、変わる可能性を秘めています。副業を応援することは、社員から「未来を応援してくれる会社」として信頼を得られるという側面もあります。募集時に「副業OK」の一言を掲げるだけでも、応募の幅は大きく広がるのです。
- 3ハラスメント
― 雇用の“地雷”をどう防ぐか
- 採用で一番怖いのは「入社後すぐに辞められること」です。その大きな原因の一つがハラスメント。いくら制度を整えても、職場にハラスメントがあると社員は定着しません。しかも、口コミサイトやSNSを通じて「ハラスメントのある会社」というレッテルを貼られると、採用活動そのものが難しくなります。だからこそ、ハラスメントのない職場づくりは「コンプライアンス」と同様に採用の武器です。具体的な対策は、管理者向け、全社員向けなど対象者別に研修を徹底する。社内・社外に相談窓口を設置し、ハラスメント発生時には適切に対応する。通報者が不利益を被らないルールを守る。こうした仕組みを整えて初めて、「安心して働ける会社」として求職者から選ばれるのです。
- 結論新常識を押さえた企業だけが“選ばれる”
- 雇用の多様性対応力、副業応援、ハラスメント防止。この3つは一見バラバラに見えますが、実は共通しています。それは「社員が安心して自分らしく働けるかどうか」。採用力は給与や待遇だけでは決まりません。「この会社なら安心できる」「この会社なら成長できる」―そんな会社だと思ってもらえるか。それが、勝負を分けます。7人の社労士が口をそろえて言うのは、雇用の常識をアップデートできる企業こそが未来を掴むということ。今までの常識に縛られるのではなく、新常識を取り入れる柔軟さこそ、これからの採用力の源泉なのです。